今はすでに「下手なこと言っちゃいけない時代」なのか?
昨日ある人がつぶやいた。
「今はもう下手なこと言えない時代だから」
その人は90代の高齢者で、少し認知症があると言われているが、ニュースで、万引きをしたと言う虚偽の記録が消されていなくて推薦を受けられなかった中学生の自殺のことも、水曜から真冬の寒さに戻っていることも、よく知っていた。
その人が、ニュースの中の政治家や政権者を見て、「今はもう下手なこと言えないから時代だから」と言って口を閉じた。
何のことかと思い、思わず尋ねてみた。
「それにしても戦争に行った人たちは、今の時代のことをどう思っているんでしょう?」
するとその人は、
「えー、それはー、まぁー、ねー」
ととても話しにくそうに言葉を伸ばして、ため息をつき、目を伏せた。
下手なこと言えないとは、やはり戦争の事を指していたのかと思う。
だとしたら、戦争に反対する事はもはやお上にたてつくことを意味するのだろうか。
この人は、かつて七十数年前、こうやって自分の身を守らなければならなくて、そうすることが、もう骨の髄まで染み、体に叩き込まれているのだろうか。
こうやって身を守らなければならなかった日本人は、戦後の民主主義のように、処罰がなければ何でも言う日本人だ。
でもひとたび自由にしゃべることが処罰を伴う時代になった時には、下手な事は何も言わない日本人になる。
今日のニュースで、トランプ候補の集会に反対派が押し寄せ、賛成派ともみ合いになり、集会が中止になったと伝えられた。
アメリカには、下手なことを言わない安全よりも、反対を表明して獲得する安全を重視する人がまだいるようだ。
国境なき記者団が発表する「世界報道自由度ランキング」で、日本のメデイア自由度の順位は、昨年第61位である。
この国はもう下手なことが言えない国になってしまったのだろうか?