いま言葉にできること

Miumiブログ。世界を、時代を、現代を見つめて、言葉は真実をあきらめてならない。

Post-「共謀罪」の世の中

19日に衆議院法務委員会で強行採決された「共謀罪」は、じきに衆議院本会議で可決され、おそらく審議など到底不十分なまま参議院を通るだろう。平気で言っているわけではない。共謀罪は歴史に対する犯罪だ。だけど安倍政権が憎悪してやまない民主主義を、安倍政権が絶対的に負けない数の暴力で踏みにじることができるのだから、「この法案を絶対に阻止できる」などという楽観論に立つことはできない。

共謀罪は「一億総監視社会」を作る、と言われる。
だが実際には、今もうすでに私たちの生活は、ほとんど自動的に監視された状態にある。

スマホを繰って、前から欲しかった”ベージュのジャケット”を半日かけて探したとする。
するとなぜだか、「今度は夕飯のメニューを検索しよう」と料理アプリを開いた途端、画面の一部広告に”ベージュのジャケット”群が現れる。

 

あるいは、ニュースアプリの広告に、あなたの住んでいる「○○市の不動産価格が高騰」というニュースが載る。「えっ、うそ。ちょっと見てみよう、これが最新のニュースなら、結構いい情報かも」そう思ってニュースを開こうとして、指が止まる。おっと、これは広告だ、なぜか私に向けられた…。
でも、なぜ私の住んでいる市が広告主にわかるのだろう?
ああ、ニュースアプリには、天気予報情報を取得するために、私のスマホの位置情報へのアクセスを許可していたのだった…。

 

あるいは、あるアプリは無料でスマホの写真のバックアップを取ることができる。便利だが、そのアプリからある日こう呼びかけられる。
「母の日に、あなたの大切な人のために、あなただけの”母の日ムービー”を作りませんか?」
なるほど、いいかも、と思い ”YES” をタップすると、即座にアプリが聞いてくる。
「あなたのお母さんはどれですか?」
画面を見れば、ぎょぎょぎょぎょぎょ!
私を始め、父母、兄弟、友人、そして「あれ?これ誰?」となかなか思い出せないくらいの友達の友達まで、私のフォトアプリに収録された写真に写っているすべての人物の顔が出ている。
一人一人ダブることなく、見事に識別されている。

 

こういった個人のデータの処理操作は、全く自動的に、個人のスマホに関わるあらゆるSNS・アプリケーションソフト・企業体がほぼ自動的に行なっている。
このデータを集めれば、見ているニュース、探している商品、つぶやいた言葉、メールのやり取りをした相手等々から、個人の好みや嗜好、人間関係、交友関係がほぼ判明する。
性格や思想傾向、社会的な行動傾向も判明するかもしれない。
例えばネトウヨだったりリベラルだったり、ヘイトをおこなったり、「安倍政権を許さない」と思っていたり、そのために友人と誘い合わせてデモに行ったり…。そんな個人の傾向を探るのは、ネット社会ではお茶の子さいさい。もうすでに自動的に日常的に、データは蓄積されている。
簡単なのだ。あなたのプライバシーを解析することは。
あなたのスマホはあなたの検索内容やすべてのやり取りを記憶していて、確実にあなたの情報を記録している。

 

共謀罪」ができれば、その個人情報が企業の手から公安に渡るだけのことである。いや、すでに個人情報は入手されているのかもしれない。

2013年のスノーデンファイルに「XKEYSCORE」というネット上の監視システムがアメリカから日本側に提供された記載がある。4月24日NHKニュースWebが報道した。
とするならば、共謀罪が通ることで、すでにネットによって記憶され記録された個人の情報は、合法的に権力の手に移ることになるのだ。
簡単である。あなたのプライバシーを警察権力が手に入れることは。

 

共謀罪」。
多くの日本人がこの法案の成立にそれほど危機感を持たないことの理由の一つは、「自分が多数者だ」と漠然と信じているからである、と論じた人がいた。そして彼らは「もし自分が少数者だ」と感じた時は、すぐに多数者に戻ることが可能だと信じている、と。
そうかもしれない。
いつも「多数者」にもぐりこんで、「異端者」になったり「少数者」になることを避ける生き方が得意な人は、たくさんいると思う。
でも、一度でもいじめられたり仲間はずれにされたり、周囲から奇異な目で見られたり、人と同じでない経験をしたことがあるならわかるかもしれない。何のいわれもなく何の根拠もなく、人から悪く取られたり疑われたり、いきなり「異端者」や「少数者」として周囲から迫害されることは、ある、ということを。

 

POST-共謀罪
共謀罪が成立すれば、そうした疑いによる公権力の調査・情報収集・捜査・取り調べが合法化される。知らないうちに言われなく疑いをかけられ、権力によってプライバシーを無残に徹底的に暴かれ、しつこくしつこく取り調べられ、警察の作ったストーリーにそって何度も何度も同じことを聞かれ、気がついたら警察の作ったストーリーによって徹底的に異端者にされていた、なんていうことが当たり前の世の中になるかもしれない。

 

「以前だって、警察に捕まったらたとえ無実でも冤罪にされる人がいた。でももう今は、捕まったら誰でも簡単に有罪にされてしまう。だって、何もやってなくても、心の中で考えたり、人の話を聞いてうなずいたりしただけで、有罪にできるんだから。
一般人? ”ここにきた段階で、お前はもう一般人じゃないんだよ”って取調室で言われたよ。
しかも手帳と双眼鏡を持ってたから、”共謀の下見してたんだろ”って言われた…」